開講年度
開講学部等
2025
人文学部
開講学期
曜日時限
授業形態
AL(アクティブ・ラーニング)ポイント
後期
水5~6
講義
1.0
時間割番号
科目名[英文名]
使用言語
単位数
1012315014
言語学特殊講義(言語情報学)[Topics in Linguistics (Modelling Language)]
日本語
2
担当教員(責任)[ローマ字表記]
メディア授業
乾 秀行[INUI Hideyuki]
ー
担当教員[ローマ字表記]
乾 秀行 [INUI Hideyuki]
特定科目区分
対象学生
対象年次
2~
ディプロマ・ポリシーに関わる項目
カリキュラムマップ(授業科目とDPとの対応関係はこちらから閲覧できます)
メディア授業
×
メディア授業とは,メディアを利用して遠隔方式により実施する授業の授業時数が,総授業時数の半数を超える授業をいいます。
メディア授業により取得した単位は,卒業要件として修得すべき単位のうち60単位を超えないものとされています。
授業の目的と概要
人間言語の時間表現について、コムリー(2014)「テンス」とBhat (1999)を教材にしながら、言語類型論的観点から講義をします。人間が地球上に同じように生きているのであれば、時間が平等に存在する以上、どの言語も時間を表現する手段を必ず持っているはずで、そこには普遍性があると考えられます。しかし、諸言語の時間表現を見ると実に多様で、どの言語も同じシステムを持っていません。
テンスというカテゴリーは、人間の歴史的時間を把握する形式です。過去、現在、未来の形式がすべて揃っているフランス語のような言語は世界的には少なく、たとえば日本語の「ル」と「タ」はそれぞれ「非過去」と「過去」を表し、「非過去」によって「未来」も「現在」も表せます。中国語やアイヌ語にはテンスを表す形態素がなく、たとえば「今日」や「昨日」といった時間を表す副詞によってテンスが判断されます。もう一つ、「過去」と「未来」に関しては、現在の時点からの遠さにおいて何段階かの区別を持つ言語も存在します。たとえば、ついさっき終わったイベントと大昔にあったイベントを形態的に区別します。
テンスに対比して、アスペクトは動作の過程的時間を表す形式で、基本は「未完了」と「完了」です。テンスとアスペクトを組み合わせることで、たとえば過去完了のような「相対テンス」を表す形式が生まれます。また、テンス形式を持たない言語において、「未完了」がテンスの「現在」と「未来」、「完了」が「過去」を同時に含意することになります。一方、本来話者の判断に関わるムードも、テンスを持たない言語において、「非現実」と「現実」という形式によって、「非現実」が「未来」、「現実」が「過去」と「現在」を含意することになります。このようなわけで、言語の時間表現を理解するためには、それぞれの言語でテンス・アスペクト・ムードがどのような形式によって役割分担をしているかを総合的に観察する必要があることがわかります。
ところで、テンスやアスペクトの形式はすべての動詞に一様に接続できませんし、表す内容も変わります。そこには動詞が持つ語彙アスペクト(アクチオンツアルト)が大きく関与しています。たとえば日本語の「テイル」形の接続で考えてみると、動作動詞には「テイル」形が接続できますが、状態動詞(あるいは形容詞)には接続できません。また、同じ動作動詞であっても継続動詞「歩く」と瞬間動詞「殺す」では「テイル」形を接続させた場合、その表す内容(継続動詞では表示状況と瞬間動詞では結果状況)が全く異なります。
以上を踏まえて、本講義では、諸言語がどのような時間表現のシステムを用いているかを言語類型論的に観察し、また動詞の語彙アスペクトにも注目しながら、言語の多様性と普遍性について一緒に考えていきます。
授業の到達目標
言語類型論の基本的な用語に関する知識を身につけ、それによる研究内容を理解できる。世界言語全般の視点から言語現象を客観的に考察できる。世界諸言語に関して広く関心を持つことができる。
授業計画
【全体】
授業は毎回テキストに沿って、解説を行います。期末レポートはA4で5枚以上書きます。
項目
内容
授業時間外学習
備考
第1回
オリエンテーション
授業内容、授業の進め方、成績評価法の説明
TeXで発表資料を作成する。
授業計画に沿って、準備学習2時間と複数2時間を行う。
第2回
時間論理1
歴史的時間のテンスと相対的時間のアスペクト
TeXで発表資料を作成する。
授業計画に沿って、準備学習2時間と複数2時間を行う。
第3回
時間論理2
テンスと直示
TeXで発表資料を作成する。
授業計画に沿って、準備学習2時間と複数2時間を行う。
第4回
絶対テンス1
現在、過去、未来の形式を持つ言語の表現法
TeXで発表資料を作成する。
授業計画に沿って、準備学習2時間と複数2時間を行う。
第5回
絶対テンス2
無テンス言語の時間表現
TeXで発表資料を作成する。
授業計画に沿って、準備学習2時間と複数2時間を行う。
第6回
相対テンス1
相対過去、相対現在、相対未来
TeXで発表資料を作成する。
授業計画に沿って、準備学習2時間と複数2時間を行う。
第7回
相対テンス2
諸言語の相対テンスの表現法
TeXで発表資料を作成する。
授業計画に沿って、準備学習2時間と複数2時間を行う。
第8回
アスペクト言語
アスペクト形式しか持たない言語のテンス表現
TeXで発表資料を作成する。
授業計画に沿って、準備学習2時間と複数2時間を行う。
第9回
ムード言語
ムード形式しか持たない言語のテンス表現
TeXで発表資料を作成する。
授業計画に沿って、準備学習2時間と複数2時間を行う。
第10回
時間の遠さ
時間の遠近を表現する言語
TeXで発表資料を作成する。
授業計画に沿って、準備学習2時間と複数2時間を行う。
第11回
アスペクト形式1
状態相、継続相、瞬間相
TeXで発表資料を作成する。
授業計画に沿って、準備学習2時間と複数2時間を行う。
第12回
アスペクト形式2
習慣相、進行相、反復相
TeXで発表資料を作成する。
授業計画に沿って、準備学習2時間と複数2時間を行う。
第13回
語彙アスペクト
状態動詞、継続動詞、瞬間動詞
TeXで発表資料を作成する。
授業計画に沿って、準備学習2時間と複数2時間を行う。
第14回
言語の時間表現1
ATMと時間副詞
TeXで発表資料を作成する。
授業計画に沿って、準備学習2時間と複数2時間を行う。
第15回
言語の時間表現2
ATMと時間副詞
TeXで発表資料を作成する。
授業計画に沿って、準備学習2時間と複数2時間を行う。
第16回
期末テスト
期末テスト
授業で扱った範囲の勉強をする。
授業計画に沿って、準備学習2時間と複数2時間を行う。
※AL(アクティブ・ラーニング)欄に関する注
・授業全体で、AL(アクティブ・ラーニング)が占める時間の割合を、それぞれの項目ごとに示しています。
・A〜Dのアルファベットは、以下の学修形態を指しています。
【A:グループワーク】、【B:ディスカッション・ディベート】、【C:フィールドワーク(実験・実習、演習を含む)】、【D:プレゼンテーション】
A: --% B: 10% C: --% D: --%
成績評価法
授業内容のレポート、学期末のレポートで評価します。
授業レポート 50%、学期末のレポート 50%
教科書にかかわる情報
教科書
書名
テンス
ISBN
9784758922029
著者名
バーナード・コムリー著 ; 久保修三訳
出版社
開拓社
出版年
2014
教科書
書名
The prominence of tense, aspect and mood
ISBN
9781556199356
著者名
D.N.S. Bhat
出版社
John Benjamins Pub.
出版年
1999
備考
参考書にかかわる情報
参考書
書名
Tense and aspect systems
ISBN
9780631141143
著者名
Osten Dahl
出版社
B. Blackwell
出版年
1985
参考書
書名
The evolution of grammar : tense, aspect, and modality in the languages of the world
ISBN
9780226086651
著者名
Joan Bybee, Revere Perkins and William Pagliuca
出版社
University of Chicago Press
出版年
1994
参考書
書名
言語の時間表現
ISBN
4938669404
著者名
金子亨
出版社
ひつじ書房
出版年
1995
備考
メッセージ
言語学分野の先取り履修科目です。言語学分野に進む人は受講してください。毎回ノートパソコンを使います。
キーワード
テンス、アスペクト、ムード、未完了、完了、非現実、現実、語彙アスペクト
持続可能な開発目標(SDGs)
(教育)すべての人に包摂的かつ公正な質の高い教育を確保し、生涯学習の機会を促進する。
(不平等)各国内及び各国間の不平等を是正する。
関連科目
言語学概論(意味・類型・歴史)、言語学特殊講義(言語学)、言語類型論、言語学演習(言語情報学)
履修条件
受講するには言語学の基礎知識が必要となりますので、分野入門「言語学概論(意味・類型・統語)」や「言語類型論」を受講している人を対象にします。
連絡先
inui@yamaguchi-u.ac.jp
オフィスアワー
月火水の午後であれば、比較的対応可能です。相談・質問がある場合は、事前にメールでアポを取ってください。
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