タイトル

開講年度 開講学部等
2025 医学部
開講学期 曜日時限 授業形態 AL(アクティブ・ラーニング)ポイント
後期 月3~4 講義  
時間割番号 科目名[英文名] 使用言語 単位数
1052730015 血液学[Hematology] 日本語 1
担当教員(責任)[ローマ字表記] メディア授業
野島 順三[NOJIMA Junzoh]
担当教員[ローマ字表記]
野島 順三 [NOJIMA Junzoh]
特定科目区分   対象学生   対象年次 2~
ディプロマ・ポリシーに関わる項目 カリキュラムマップ(授業科目とDPとの対応関係はこちらから閲覧できます)
授業の目的と概要
血液学は、分子生物学や免疫学と深く関わっており、疾患の病因・病態の解明には欠かせない学問である。近年、造血器腫瘍の疾患分類が、形態学的(FAB分類)なものから遺伝子異常に基づく新たな分類法(WHO分類)にシフトし、診断や治療が目覚しく向上している。また、血栓・止血学の発展により死因の上位を占める虚血性心疾患や脳血管障害の発症機序も急速に解明されている。本講義では、大学病院で長年にわたって臨床血液の実務経験のある教員が、基本的な血液細胞の分化系譜や機能、および凝固・線溶系の機構を解説し、それらの異常がどのような疾患を引き起こすのか、検査学的視点と臨床病態学的視点の双方から教授する。

授業の到達目標
1)血液細胞の分化系譜、形態学的特徴、機能を説明できる。
2)各種貧血の成因および検査学的分類を説明できる。
3)造血器腫瘍の病因および検査学的分類(FAB分類・WHO分類)を説明できる。
4)血小板・凝固・線溶系のバランスと血管内恒常性維持の機構を説明できる。
5)止血機構の異常による各種疾患の病因と検査学的分類を説明できる。
授業計画
【全体】
血液学総論にて血液の成分と機能、血液細胞の産生と崩壊について概説した後、赤血球系・白血球系・止血機能系と3つのカテゴリーに分類して解説する。赤血球系では、赤血球の構造と機能について解説し、各種貧血の病因と検査学的診断について講義する。白血球系については、正常白血球の分化系譜・種類・形態学的特長・機能(役割)について解説した後、造血器腫瘍を中心に病因・分類(FAB分類・WHO分類等)・検査学的診断について講義する。止血機能系については、血小板・凝固・線溶機構のバランスによる血管内恒常性の維持について解説した後、血小板系の異常と関連疾患・凝固・線溶機構の異常と関連疾患・血栓性素因と関連疾患について、最近のトピックスをまじえて講義する。
項目 内容 授業時間外学習 備考
第1回 血液学総論 血液の成分:有形成分と無形成分
血液の性状:血液量・比重・粘度(粘稠度)
血清と血漿の違い
臨床検査に用いられる抗凝固剤
造血幹細胞と血球の分化過程
造血と血球回転
正常血球の形態と機能
血液検査:血球数算定・Hb濃度・Ht値・血小板数
血球計数(CBC)基準値と異常値の解釈
  
講義資料をダウンロード及び印刷し、予準備学習1時間を行う。
第2回 赤血球の構造と機能
貧血の総論
赤芽球系細胞の分化・成熟段階
赤血球の構造と機能
赤血球形態の異常
ヘモグロビンの構造
ヘモグロビン(Hb)の種類と合成
貧血の定義と検査
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第3回 赤血球系の異常に関連する疾患の病因と検査学的診断(1) 赤血球の分化過程から見た貧血の分類
赤血球指数による貧血の分類
鉄代謝とヘモグロビン合成
血清鉄・TIBC・UIBC・血清フェリチン
鉄欠乏性貧血の病態と検査
鉄芽球性貧血の病態と検査
サラセミアの病態と検査
無トランスフェリン血症の病態と検査
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第4回 赤血球系の異常に関連する疾患の病因と検査学的診断(2) 赤芽球系細胞の分化過程の異常から見た貧血の分類
巨赤芽球性貧血の病態と検査
ビタミンB12の吸収過程と内因子
巨赤芽球が生成される病態
巨赤芽球性貧血の特徴的な症状
巨赤芽球性貧血の原因別鑑別診断
悪性貧血の病態と診断
再生不良性貧血の病態と検査
再生不良性貧血の病型分類
再生不良性貧血の重症度分類
再生不良性貧血の治療
赤芽球癆の病態と検査

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第5回 赤血球系の異常に関連する疾患の病因と検査学的診断(3) 溶血性貧血(総論)
血管外溶血と血管内溶血
溶血性貧血の病態
各種溶血性貧血の診断に有用な検査
自己抗体による溶血性貧血の分類
Coombs試験(抗グロブリン試験)
発作性夜間ヘモグロビン尿症の病態と検査
遺伝性球状赤血球症の病態と検査
鎌状赤血球症の病態と検査
サラセミアの病態と検査
真性赤血球増加症の病態と検査
貧血が疑われた場合の検査フローチャート
正球性貧血の鑑別診断
小球性貧血の鑑別診断
大球性貧血の鑑別診断



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第6回 白血球総論 造血幹細胞と骨髄球系分化過程
前骨髄球と骨髄芽球の鑑別
白血球の分化と種類
顆粒球の種類と特徴
好中球系細胞の分化と形態学的特徴
骨髄球系(好中球)の特殊染色所見
単球・マクロファージの機能と役割
リンパ球の種類と役割
T細胞・NK細胞の分化
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第7回 白血球系の異常に関する疾患の病因と検査学的診断(1) 白血球の形態異常
好中球:核の異常・細胞質の異常
白血球の形態異常:好中球核過分葉・Pelger-Huёt 異常・偽ペルゲル異常・低顆粒(脱顆粒)・Alder-Reilly異常・Chédiak-Higashi顆粒症候群・空砲形成・中毒性顆粒・デーレ小体・アウエル小体
顆粒球数の異常と疾患
好中球が増加する疾患・減少する疾患
無顆粒球症・類白血病反応
伝染性単核症の病態と検査
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第8回 白血球系の異常に関する疾患の病因と検査学的診断(2) 造血器腫瘍の総論と概念について
腫瘍化の段階と分化の有無による 増殖のパターン
増殖器腫瘍の種類:骨髄系とリンパ系
FAB分類の全体像と検査所見
骨髄系とリンパ系を鑑別するMPO染色
M4とM5の鑑別に重要な エステラーゼ二重染色
M6の異常赤芽球を染めるPAS染色
WHO分類の利点:治療や予後推定
白血病の分類:急性 vs 慢性
急性白血病の病態と検査
白血病裂孔について
急性白血病の疫学
急性白血病の診断手順
遺伝子異常による主な造血腫瘍の発症機序
急性白血病の化学療法と白血病細胞数


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第9回 白血球系の異常に関する疾患の病因と検査学的診断(3) 急性骨髄性白血病(AML)の病態と検査
AMLのFAB分類
急性前骨髄性白血病(APL)の病態と検査
APLの特徴的な鏡検所見
APLの特徴的な染色体異常
ATRAによる分化誘導療法
急性骨髄単球性白血病(AMMoL)の病態と検査
急性単球性白血病(AMoL)の病態と検査
急性赤白血病白血病(AEL)の病態と検査
急性巨核芽球性白血病(AMKL)の病態と検査
急性リンパ性白血病(ALL)の病態と検査
ALLのFAB分類
FAB分類における特殊検査

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第10回 白血球系の異常に関する疾患の病因と検査学的診断(4) 慢性骨髄性白血病(CML)の病態と検査
CMLの染色体異常と腫瘍性増殖の原因
CMLの病態推移と急性転化
慢性リンパ性白血病(CLL)の病態と検査
抹消所見:CLL vs. HCL
成人T細胞性白血病/リンパ腫の病態と検査
ATLL:HTLV-1感染から発症まで
骨髄異形成症候群(MDS)の病態と検査
MDSで見られる血球形態異常
慢性骨髄増殖性疾患のWHO分類
骨髄線維症の病態と検査
本態性血小板血症の病態と検査
悪性リンパ腫の概念と分類
Hodgkinリンパ腫の病態と検査
Hodgkin病の臨床病期
非Hodgkinリンパ腫の病態と検査
非Hodgkinリンパ腫の悪性度分類
非Hodgkinリンパ腫の所見






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第11回 止血機構総論 血液凝固の正常と異常
止血栓の形成(血小板血栓とフィブリン血栓)
血管内皮細胞による血栓制御機構
血小板の粘着・凝集機構
血小板の活性化を促進する因子と抑制する因子
血液凝固因子の種類と作用
生体内血液凝固カスケード
外因系凝固機構と内因系凝固機構に関連する因子
凝固系活性化と血管内皮細胞とのバランス
血液凝固機構を促進する因子と抑制する因子
線維素溶解機序
フィブリン分解産物とフィブリノゲン分解産物
出血の原因と血栓の原因
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第12回 血小板系の異常と関連疾患 血小板系の異常と関連疾患について
血小板の産生・構造・顆粒
血小板の末梢循環と脾内プール・寿命
血小板数が減少する疾患
特発性血小板減少性紫斑病(ITP)の病態と検査
血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)の病態と検査
代表的な血小板機能異常症について
出血時間と血小板凝集能検査
Glanzmannの血小板無力症の病態と検査
Bernard-Soulier症候群の病態と検査
von Willebrand 病の病態と検査
storage pool病の病態と検査
一次止血に異常があり鑑別を要する疾患と検査所見








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第13回 凝固・線溶機構の異常と関連疾患 凝固・線溶機構の異常と関連疾患について
血液凝固のカスケードと制御因子
血液凝固の異常を調べるスクリーニング検査
外因系および内因系凝固機序に関連する凝固因子
出血性疾患を引き起こす代表的な凝固異常について
von Willebrand 病の病態と検査
血友 病の病態と検査
ビタミンK依存性の凝固因子
血栓性疾患を引き起こす凝固異常症について
出血傾向や血栓傾向となる原因(疾患)
講義資料をダウンロード及び印刷し、予準備学習1時間を行う。
第14回 生体内分子マーカーと播種性血管内凝固症候群(DIC)・抗リン脂質抗体症候群(APS) 生体内凝固・線溶亢進状態を反映する分子マーカー播種性血管内凝固症候群(DIC)の病態と検査
DIC の基礎疾患と病態像
DICの病態推移と鑑別に必要な検査
線溶亢進型DICと線溶抑制型DIC
抗リン脂質抗体症候群(APS)の病態と検査
抗血栓療法について
講義資料をダウンロード及び印刷し、予準備学習1時間を行う。
第15回 出血性疾患と血栓性疾患 静脈血栓と動脈血栓の違い
Virchow’s triadの病的血栓形成の3要因
血栓性素因と出血性素因
血栓症あるいは出血の病因となる疾患
血栓症あるいは出血の原因となる状態
講義資料をダウンロード及び印刷し、予準備学習1時間を行う。
第16回 血液学期末試験 定期試験を実施する 講義資料及び参考書を熟読・理解し、定期試験に備える。
※AL(アクティブ・ラーニング)欄に関する注
・授業全体で、AL(アクティブ・ラーニング)が占める時間の割合を、それぞれの項目ごとに示しています。
・A〜Dのアルファベットは、以下の学修形態を指しています。
【A:グループワーク】、【B:ディスカッション・ディベート】、【C:フィールドワーク(実験・実習、演習を含む)】、【D:プレゼンテーション】
A: --% B: --% C: --% D: --%
成績評価法
小テスト及び学期末の筆記テストで評価します。
小テスト 30%、学期末の筆記テスト 70%
教科書にかかわる情報
教科書 書名 標準臨床検査学 血液検査学 ISBN 9784260015097
著者名 矢富裕 通山薫 出版社 医学書院 出版年 2012
備考
各講義毎にスライド資料をシラバスにアップするので教科書と併せて活用してください。
参考書にかかわる情報
参考書 書名 病気が見える5 血液 ISBN 9784896329223
著者名 土屋達行 監修 出版社 MEDIC MEDIA 出版年 2024
備考
必要な参考書があれば授業中に指示する。
メッセージ
講義に使用するスライドをシラバスの資料にアップしているので、主体的且つ積極的に予習・復習してください。
キーワード
赤血球、白血球、血栓・止血、血小板、実務教員
持続可能な開発目標(SDGs)

  • すべての人に健康と福祉を
(保健)あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を促進する。
関連科目
血液検査学、血液学実習、免疫学
履修条件
生物に関する知識を必要とする。
連絡先
保健学科研究棟407号室 TEL:22-2824
オフィスアワー
nojima-j@yamaguchi-u.ac.jpにメールして確認ください。

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